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電力

電力・・・発熱したり、ものを動かしたりする能力のことで単位はワット(W)。

※電力は、中3の物理で扱う仕事量と同じ扱い。

電力(W)=電流(A)×電圧(V)

$$電力={ 電流 }^{ 2 }×抵抗$$

$$電力=\frac { { 電圧 }^{ 2 } }{ 抵抗 } $$

電力の公式は赤字の部分だけで十分ですが、回路計算において緑字の公式も覚えておくと計算スピードがかなり速くなります。

※実際に下の方にある例題で緑字の公式を使っているのでその速さを体感してもらえれば覚えたくなると思います…

 

電力量

電力量・・・消費した電気エネルギーの大きさのことで単位はジュール(J)=(W秒) や キロワット時(kW時) や ワット時(W時)がある。

電力量(J)=電力(W)×時間(秒)

※公式の単位を変換して(kW)と(時間)をかけるとキロワット時という単位になる。

問題文で指定された単位に合わせて、計算で使う単位を変換するようにしましょう。

 

熱量

※電力量も熱量も呼び名が違うだけでほとんど同じものだと思ってください。

熱量・・・消費した熱エネルギーの大きさのことで単位はジュール(J) か カロリー(cal)

熱量(J)=電力(W)×時間(秒)

1カロリー・・・1gの水の温度を1℃上げるのに必要なエネルギーで 1(cal)=4.2(J)しくは 1(J)=0.24(cal)

※「1(cal)=4.2(J) もしくは 1(J)=0.24(cal)」というのはどちらも正しいのですが、問題文によって指定があるので、それに合わせて使い分けるようにしましょう。

※そもそも指定がない場合は単位変換を使わなくても解ける問題になっていることがほとんどです。

ちなみに・・・

  • 50gの水を1℃上げるのに必要なエネルギーは50cal
  • 1gの水を50℃上げるのに必要なエネルギーは50cal
  • 50gの水を50℃上げるのに必要なエネルギーは2500cal

という感じになっていて、水の量とエネルギー、上昇温度とエネルギーは比例関係になっています。

 

ちなみに、今後覚えておくと便利な公式として以下の2つの公式を紹介しておきます。

$$水の上昇温度[℃] = 熱量[J] ÷ 4.2 ÷ 水の質量[g]$$

$$水の上昇温度[℃] = 熱量[J] × 0.24 ÷ 水の質量[g]$$

使い方は後の例題で紹介します。

例題(電力・電力量)

【例題①】下図のような回路で10秒間電流を流した。このときのA・Bそれぞれの抵抗で消費する電力と電力量、回路全体の消費電力、電力量を求めよ。

 

 

まず、並列回路なので、Aの抵抗もBの抵抗も60Vの電圧がかかる。

【Aの電力】

$$\frac { { 60 }^{ 2 } }{ 20 } =\frac { 3600 }{ 20 } =180$$

となり、180Wとなる。

【Aの電力量】

180(W)×10(秒)=1800(J)

【Bの電力】

$$\frac { { 60 }^{ 2 } }{ 30 } =\frac { 3600 }{ 30 } =120$$

となり、120Wとなる。

【Bの電力量】

120(W)×10(秒)=1200(J)

 

ここで、残っている回路全体の電力と電力量については、

  • 各抵抗の電力・電力量の和で求める
  • 電源電圧と電源から流れる電流を使い求める

この2パターンの解き方があります、今回は両方のパターンで求めます。

【回路全体の電力】

各抵抗の和の場合、180+120=300W

計算の場合、全体を流れる電流が5Aなので、60(V)×5(A)=300Wとなります。

【回路全体の電力量】

各抵抗の和の場合、1800+1200=3000W

計算の場合、全体を流れる電流が5Aなので、60(V)×5(A)×10(秒)=3000Wとなります。

 

という風に、回路全体の消費電力や消費電力量を求める場合は、1個1個の抵抗の消費電力や消費電力量を求めるのではなく、

電源電圧と電源から流れる電流を使って解く方が速くミスも少なくなります。

例題(熱量)

【例題①】次の図のように、42Vの電源に21Ωの電熱器を取り付け、100gの水が入ったビーカーに入れ、1分間電流を流した。このときの水の上昇温度を求めなさい。ただし、電熱器で発生した熱量は全て水の加熱に使われるものとする。また、水1gを1℃上昇させるのに必要なエネルギーを4.2Jとする。

【解き方】

まずは、電熱器で発生する熱量を求める。

電熱器に流れる電流は42V÷21Ω=2A

電熱器で消費する電力は42V×2A=84W

電熱器で発生する熱量は84W×60秒=5040J

Jの単位をcalに変換する。5040J÷4.2=1200cal

1200calあれば100gの水を1200cal÷100g=12℃上昇させることができる。

よって答えは、12℃となる。

【別解】

公式を使うと

$$水の上昇温度[℃] = 熱量[J] ÷ 4.2 ÷ 水の質量[g]$$

より、先ほどと同様に熱量を求めて、5040J÷4.2÷100g=12℃と求めればよい。

※今回は上昇温度を求める問題だったが、上昇温度が分かっていて抵抗を求める問題なども私立入試で出題されることがあるので、

カロリーの計算が分からない場合や、Jとカロリーの変換が苦手な人は、公式に分かる部分の値を代入して方程式を解く方が色々な問題に対応できて楽かと思います。

 

【例題②】次の図のように、84Vの電源に21Ωの電熱器を取り付け、100gの水が入ったビーカーに入れ、1分間電流を流すと水の温度が36℃上昇した。このとき電熱器から発生した熱量の何%が水の加熱に使われたか求めなさい。ただし、水1gを1℃上昇させるのに必要なエネルギーを4.2Jとする。

例題①は電熱器で発生した熱量と水が受け取った熱が同じだったが、今回は電熱器から発生する熱量のうち、いくらかは空気中に熱が逃げて、残った分が水の加熱に使われるパターンの問題である。

この場合は

  • 電熱器の電力×時間で電熱器の発生する熱量を求める。
  • 水の上昇温度から、水の加熱に使われた熱量を求める。

といったことが必要になります。

【解き方】

①電熱器の電力×時間で電熱器の発生する熱量を求める。

電熱器に流れる電流は84V÷21Ω=4A

電熱器で消費する電力は84V×4A=336W

電熱器で発生する熱量は336W×60秒=20160J

Jの単位をcalに変換する。20160J÷4.2=4800cal ←これが、電熱器の発生する熱量

 

②水の上昇温度から、水の加熱に使われた熱量を求める。

36℃×100g=3600cal ←これが水が電熱器から受け取った熱量

 

以上より、4800calのうち水は3600cal受け取っているので、

$$\frac { 3600cal }{ 4800cal } ×100=75%$$

よって、75%となりこれが答えとなる。

ちなみに、1200calはどこに行ったのか?という記述問題がよく出題されるが、それは

空気中に熱として逃げて行ったと答えておけば問題ない。また、これを防ぐための方法を問う問題もあり、これは、

(断熱性の高い)発砲ポリスチレンのカップを使うと答えておけばよい。

 

 

熱量計算のまとめ

例題は抵抗が1つだけのシンプルな問題だったが、抵抗が2つ直列に並んだ場合も並列に並んだ場合も基本的には同じ解き方で解ける。

その場合のコツとして、上昇する温度は水の量・電流を流した時間を一定が同じであれば電熱器が発生する熱量に比例するということである。

例えば直列回路なら以下の図のような感じ

この場合なら、AとBの電熱線に流れる電流が同じなので、電圧によって熱量が決定される。電熱線にかかる電圧の比は

A:B=1:3になるので、水の上昇温度もA:B=1:3となる。

 

また、並列回路なら以下の図のような感じ

この場合なら、AとBの電熱線にかかる電圧が同じなので、電流によって熱量が決定される。電熱線に流れる電流の比は抵抗の逆比の関係より

A:B=3:1になるので、水の上昇温度もA:B=3:1となる。

 

ということで、抵抗が大きいから上昇温度が大きいなどということは一概には言えない。

重要なのは抵抗の消費電力が大きいほど、上昇温度がそれに比例して大きくなるということである。

 

⇐3.オームの法則(回路計算)   5.磁界⇒

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